相応しい彼氏

気づけば20日が経過していた。

 

何のために生きているのかわからなくなったあの日から。

 

 

今読み返すと、あの時ほど生きる意味を見失ってはいない。

何のために生きるのかは未だにわかっていないけど。

 

 

 

あの日から、ありとあらゆる検索をして、ありとあらゆる記事を読んだ。

私は復縁したかったのだ。

どんなことをされてもずっと彼が好きだったのだ。

連絡手段をすべてブロックされても尚、復縁を諦めていなかった。

 

正確には、まだ、これを書いているこの瞬間も諦めてはいないかもしれない。

でも、今日は少し、彼を嫌になれた。

まだ元彼というにはしっくりこない。振られた彼氏。嫌われた彼氏。

私の方でも、彼をやっと少し、嫌いになれた気がした。

 

 

 

 

 

ありとあらゆる記事を読んで知った、破局後の男性は開放感でいっぱいという性質。

それをなんとなく目撃し、想像した。

 

 

 

悲劇にも、私たちは週に一回同じ授業を受けている。

大教室だから、別に顔を直接合わせることもないけど視界には入る。

 

グループワークが多いこの授業で今日、

グループ内の女の子ととても楽しそうに話す彼を見た。

他の人を見てもだれも楽しそうにしている者がいないあの授業で、

その光景は滑稽に目立っていた。

ここで今私が少し攻撃めいた形容をしたのはやはりまだ未練があり、嫉妬があるからだとは思う。

 

それを見て、私がいなくても楽しそうで、

私といる時より楽しそうで、

私はあなたがいなくなって何も楽しくないのにそっちは楽しそうで、

ものすごく心が痛んだ。手が震えた。

この嫉妬を本人に言うことができる資格も今は無くなった事実にも、ものすごく悲しくなった。

 

どうせ、サークルでも私から解放されて好き勝手自由に女の子と楽しくやっているのだろう。

私は知っている。

あのサークルにロクな女がいないことを。

そんな女に目移りする彼がどうしようもなく馬鹿で阿呆で情けない。

 

 

こうやって、一年間隣にいた美人で彼を何より一番に考えていた女より、新鮮味だけの無価値でブスな女に好意を寄せる彼を蔑み、嫌った。

その女どもも時が経てばお前を縛り、さらに美しく無くなっていく。

それに気づかないあいつは、相当な馬鹿だ。

私を手放したことを絶対に後悔してほしい。

 

 

 

しかし、嫌った先に、新たな考えが浮かんだ。

彼にとっては、新しく出会った彼女たちのほうが相応しかったから、

彼は私を捨て、今を楽しんでいるのではないか。

話したこともない彼女らより、私の方が彼に相応しいなどはわかりもしない。

相応しかったから、楽しそうに話していたのだ。

 

そう考えると、私にも、彼よりもっと相性のいい人がいるに違いない。

彼にはあんな汚い女が相応しかったのだとしたら、そんな彼は私に相応しい訳がない。

 

 

 

 

 

 

そもそも私は、彼のそうやって女の子も含めだれでも気軽に話せる社交的なところが好きだったような気もする。

付き合う前や付き合ってすぐの頃は、社交的で誰からも好かれる人気者の彼が好きで、

その彼を私のものにしたい、人気者だけど、みんなが好きだけど、でも私のものなの、

などという競争心、独占欲、誇りが彼への好意に繋がっていたように思う。

 

いつから、彼を縛ってしまったのだろう。

人気者なところが好きだったのに、人気者じゃなくなるように縛っていた自分が今更こわい。

今日あの光景を見て、彼は一年前と何も変わっていないようにも思えた。

変わったのは私で、付き合っている間彼を変えてしまっていたのも私だ。

 

 

 

 

 

今まではずっと、彼しかいないと思っていた。

彼以上に好きになれる人などいないと。

しかし今は彼以外もいるかも、と少し思えたきた。

それに最近思う、恋愛が何だ。他にすることはたくさんある。

恋愛ドラマを見ていると、もっと他に考えることはないのかと思う。

私の中でのやるべきことはまだ模索中だが。

 

 

 

いずれにしても、彼がこれから何も私に連絡してこなかったのなら、

彼には私より相応しい人がいたということだし、私にもいるということだ。

彼が自由に遊んで遊んで、それでも私に連絡を寄越したら、

私の価値にやっと気づいたのだねと見直したい。

 

 

 

 

どちらにしても未来は明るい。